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生命のバロメータ

悪天候の準備をする際の頼りとなる気圧計と同じように、『IUCN レッドリスト』は生物種に及ぼす圧力を測定し、絶滅を防ぐためにはどのような保全行動が必要かを教えてくれる。『IUCN レッドリスト』が生命のバロメータ<とも呼ばれるゆえんである。

 

 

これまで116,000種以上が評価された。これは途方もない成果である。しかし、われわれの作業は終わったわけではない。『IUCNレッドリスト』が強力な保全ツールとして役立ち続けるには、動物、菌類、植物の評価種数を増やす必要がある。

目標: 2020年までに 160,000種

目標は、2020年までに少なくとも160,000種を評価することである。それができれば、『IUCNレッドリスト』の能力をさら高めることになり、世界の生物多様性の健全性に関する最新の情報を提供するとともに、それによりどういう保全行動が必要かを教えてくれることにもなる。

2020年までに160,000種に達するには、次のふたつのことが必要である。

  1. IUCNレッドリスト評価を実施する訓練を積んだ専門家の数を増加させる。
  2. 1年間に評価される種数を大幅に増やす。

 

これまでの進捗

現在、「IUCNグローバルスピーシーズプログラム」は116,000種以上のデータを管理しており、この数を今後数年のうちに大きく増やすことにしている。106,700種強が詳しく文書化されており、生態、個体数、脅威、保全行動、利用に関する情報が網羅されている。さらに90,400 種以上の分布図も載っている。『IUCNレッドリスト』に収載されたデータには絶滅危惧種以外の種も含まれている。いくつかの分類群では、全種あるいはほぼ全種が評価されている。哺乳類、鳥類、両生類、淡水産カニ類、造礁サンゴ類、サメ・エイ類、ハタ類、ベラ類、イセエビ類、針葉樹、ソテツ類である。

新規記載種とよく知られていない種群に属する種が初めて評価されることにより、『IUCNレッドリスト』は更新するたびに大きく成長している(図1)。IUCNとそのパートナーが一緒になって、世界の生物多様性の状況に関する知識を改善するために、レッドリスト評価を完全におこなっている分類群の数を拡大しているところである。

図1.『IUCN絶滅危惧種レッドリスト™』で評価された種数の増加[青:2000-2020 (2020-1版)]及び 160,000種目標を達成するために必要な種数(赤点線:2020-1-2020-3)。
 

現存データの限界

現在のデータにはいくつかの大きな限界があり、レッドリストのデータに基づき分析を行う場合、そのことを十分理解しておく必要がある。これまで評価した生物種群は陸域、とくに森林生態系に偏っている。詳細に文書化された種の中でも、植物や菌類よりも、動物に大きく偏っている。これらの偏りを是正する試みが進行中である。

すべての分類群が完全に評価されたわけではない。レッドリストの各カテゴリーに属する種数を見るとき、このことを念頭に置くことが大切である。『IUCNレッドリスト』は種の現状を俯瞰するのに便利であるが、世界の生物多様性の完璧な評価結果であると解釈すべきではない。絶滅リスク評価は、世界の既記載種の5%未満しか完了していない。したがって、地球上のすべての種のうち何種が絶滅危惧であるかに関する全体的な推定値をIUCNが示すことは不可能である。

より包括的に評価された分類群の中で、絶滅危惧種が占める割合については統計要覧 のページを参照されたい。

 

現在のギャップを埋める可能性

現在、IUCNとレッドリスト・パートナーが扱っている分類群でギャップが存在するのは、植物、無脊椎動物、菌類、淡水産種、海産種である。この作業を方向づけるため、IUCNレッドリスト委員会は、2017-2020期レッドリスト戦略計画を合意、採択した。戦略計画の「結果1」は、IUCNレッドリストの分類群と対象地域の拡大を扱ったものである。それに基づき、偏りを減らすために多くの世界生物種評価プロジェクトが合意された。これに加え、IUCN種の保存委員会の無脊椎動物小委員会、海産種保全小委員会、植物保全小委員会との協力により、多くの目標が特定され、合意された。しかし、生物多様性評価作業を進めるための速度と範囲は、限られた財政資源のため大きく制限されている。

 


分類学的ギャップ

植物 『IUCNレッドリスト』には、40,000種以上の植物が載っているが、これは世界の既知の植物種のほんの一部に過ぎない。このギャップを埋めるため、IUCNは広範な評価プロジェクトを実施しており、国内レッドリストにも努力を傾注している。たとえば:
 

  • 人類のための植物という取り組みは、優先順位の高い植物種群、つまり野生作物近縁種、薬用植物、木材用木本類、ヤシ類の評価に焦点を当てている。
  • 世界樹木評価は、2020年までに既知の樹種すべての保全状況を評価することを目指している。

 

植物評価プロジェクトの詳細は、IUCN SSC植物専門家グループのページからリンクを辿ること。

 

淡水産種 – 淡水生態系はあらゆる生態系の中で最も脅威に晒されている。淡水環境に依存している生物種の多くは、地域社会にとって高い生計上の価値を有す。IUCN淡水プロジェクトは、魚類、貝類、カニ・ザリガニ類、トンボ類に焦点を当てている。 IUCN淡水生物多様性部門(FBU)は、淡水生物多様性がこれまで生じたことのないレベルの脅威に晒されていることを意識啓発することを目指している。FBUは河川バンクの取り組みを通じ、IUCNレッドリストにおける淡水種評価の数を 増加させるべく、働いている。

 

 

 

海産種 – 海産生物種のIUCNレッドリストは非常に貧弱である。評価された種は15%未満に過ぎない。IUCNは、海産魚類、無脊椎動物、植物(マングローブと海草)、海藻に高い優先順位を設定した。これらの優先分類群が評価されれば、『IUCNレッドリスト』の海産種の掲載数が6倍以上も増えることになる。世界海産種評価に関する詳細はIUCN海洋保全小委員会世界海産種評価のウェブサイトを参照されたい。

 

爬虫類  – 地球規模での気候変動の影響により地球の陸地の状況はいっそう悪化し、乾燥地や半乾燥地が拡大している。現在、乾燥地生態系に分布する種群で評価されたのはほんの少ししかない。また、世界の乾燥地生態系のほとんどが急激に悪化している。世界の11,000種強の爬虫類が完全に評価されつつあり、このギャップを埋めるのに役立っている。爬虫類評価は、すべての陸生脊椎動物の評価を完了させる一環でもある。爬虫類評価は一連の地域別プロジェクトを通じて始まっており、これまで7,800種以上が評価されるなど、大きな進展が見られている。

 

無脊椎動物 – 動物界で最大の分類群であり、全動物種の約97%が無脊椎動物と推定されている。しかし、『IUCNレッドリスト』では全動物種の31%しか評価していない。この重要な分類群の実態を反映させるため、IUCNは評価対象として優先すべき分類群を抽出してきた。マルハナバチ類、オオカバマダラ類、アゲハ類、淡水産甲殻類、トンボ類、カギムシ類、シャコガイ類、アワビ類、ウニ類、およびクモ・サソリ・バッタの特定の科などである。

 

菌類  – 菌類は世界の最も多様なグループのひとつであるが、『IUCNレッドリスト』では最も不十分で、300種以下しか評価されていない。菌類はきわめて重要な生態系の要素であり、栄養塩循環に不可欠で、人間の生活に広範な利益をもたらしている。レッドリストに菌類の実態を反映させるため、IUCNでは現在、広範な菌類の分類群を評価しているところである。これには、地衣類、キノコ類、サビ菌類、クロボ菌類、トリュフ、ツボカビ類、変形菌、うどん粉菌などが含まれる。菌類評価の詳細は、世界菌類レッドリストイニシアチブのウェブサイトを参照のこと。

 

 

より多くの種がレッドリストに掲載され、データの偏りが少なくなるに連れ、『IUCNレッドリスト』は世界的および地域的な分析をおこなうためのより強固な基盤を提供することになる。さらに、これらのデータは生物多様性条約(CBD)の2020年愛知生物多様性目標 や国連の持続可能な開発目標 (SDGs)、とくに目標15の達成に向けての進捗度合いの測定に必要な指標の基盤ともなる。

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